[TJOコラム]TBSラジオ”アトロク”UKサウンドMIX解説

[TJOコラム]TBSラジオ”アトロク”UKサウンドMIX解説

先週末の金曜TBSラジオ”アフター6ジャンクション”でDJ Mixゲスト出演しました。

この日のテーマはいろいろ悩んで、他のどこでもやらないものを作ろうと思い、最近特にハマっているUKのファンクやポストパンク〜ジャズ〜グライム〜ソウルといったサウンドに焦点を当ててMixを作りました。ラジオ内で宇多丸さんにも語った通り、この番組のMixでは基本喋りは入れないのでこのコラムでどんな曲を選んだかを解説していきます。

あと1日だけアーカイブ聴けますのでぜひ:6/18金曜の夜まで
視聴>>> http://radiko.jp/share/?t=20210611190000&sid=TBS

トラックリスト

1. Jungle – Talk About It

1曲目は出たばかりの新曲から。ジョシュ・ロイドとトム・マクファーランドによるプロデューサー・ユニット、ジャングル。名門XL Recordingsからリリースした過去作品もレイドバックしたディスコ&ファンクなサウンドで大好きだったけど、今作はUK女性ラッパーLittle Simzも手掛け、話題の覆面ユニットSAULTのメンバーとしても知られるInfloがプロデュース。アップテンポなブレイクビーツにストリングス、ダビーなベースラインと、まんまSAULTな感触なんだけどやはりカッコいい!MVもこう言ったサウンドで踊ったらカッコいいんだろうなというのを表現した、UKらしい最高にクールなダンス・ビデオに。しかも一発撮りなんだって!


2. SAULT – I Just Want To Dance

続いては同じBPMで、上のJungleの曲も手掛けたプロデューサーInfloのユニット。他にシンガーのCleo Sol、Melisa Youngもメンバーと噂されているSAULT。2019、2020の2年間だけで4枚のアルバムをリリースする破格の勢い、しかもスピード感だけでなくクオリティもしっかりしてるんだから、当初は覆面ながらも「誰だこいつらは!」ってなるよね。ソウルもファンクもアフロもパンクもニューウェーブも飲み込んでるのに雑多にならずに極めてシンプル。しかもソウルフルでグルーヴが「黒い」。どの曲もフックになるカッコ良さがあって圧倒的な存在感を見せてくれて気付けばすっかり夢中になっていた。2020年のBlack Lives Matterに触発されて6月にはもう完成させていたアルバム『Untiltled (Black is)』はbandcampで配布中なので気になった人はこれを機にぜひ。

3. Morrisson – House & Garage feat. Aitch

グライムやアフロビーツを始めとしてUKヒップホップは自国の独自のカルチャーをどんどん取り入れて面白くなってる。中でもUKを中心に90年代に生まれたUK Garage/2Stepをベースとした曲もいまだに多く生まれていて、AJ Tracey – Ladbroke Groveを筆頭にメロウ系の名曲も多いのが嬉しいところ。Morrissonは今回初めて知った名前だけど2010年以前から活躍するラッパーらしく、途中ドラッグによる服役を経て2017年以降にカムバック。Aitchは20歳にしてエド・シーランなどともコラボ。BRIT AWARD 2020で最優秀賞新人賞にもノミネートのアップカミングスター。

4. Pa Salieu – Frontline (Yussef Dayes Remix)

パ・サリュは今年の始めに書いた「BBC Sound of 2021」の記事でも書いた通り、英国国営放送のBBCが選ぶ注目アーティストのNo.1に選ばれたばかりの勢いあるラッパー。西アフリカのルーツを感じさせるフロウやグルーヴは中毒性あるし、Tom Mischとのコラボなどでも知られるUKジャズシーンで人気のドラマーYussef Dayesが、ダークな高速ブレイクビーツに仕上げたヒット曲”Frontline”リミックスが大好き!

5. black midi – John L

これと次の曲が今回のミックスの中で一番聴いてもらいたかった部分、そして最近聴いててメッチャテンション上がるUKロック。英国の名門校ブリット・スクールで結成され、2019年のデビュー作『Schlagenheim』が各メディアのベストに選出、マーキュリー・プライズにもノミネートされ、2年越しのセカンドアルバム『Cavalcade』も確かなスキルとポストパンクもジャズも感じさせるエネルギーとテンションに満ちた1枚。それでいてこの「John L」みたいにケレン味たっぷりなリフとポエトリーリーディングで疾走感とインパクト強く攻めるのも最高。大好きなのでミックスの中でも長めに使ってます。ちなみに彼らのこの新作がUKでチャートに上がらないのはツアーに入場できるゴールデンチケットを意図的に封入してるからなんだって。

6. Squid – G.S.K.

これもblack midiからの流れで聴いてほしいUKブライトンのポストパンクバンドSquid。デビューアルバムはあのテクノの名門にしてジャンル不問のユニークなサウンドを送り出しいまだに第一線で活躍するレーベルWARPから。ロックでジャジーでダビー、欲しい要素全部入ってる。

7. Franc Moody – Dream In Colour

後半はディスコでファンクな注目株を。Ned FrancとJon Moodyを中心とするバンドで、Daft Punkやここ最近のKrystal Klear的なヨーロッパで盛り上がるディスコ系のポップさも感じさせる作風で人懐っこさもあってオススメです。これは昨年リリースされたアルバム『Dream In Colour』からの表題曲。AORみもあってツボ。

8. Jordan Rakei – Signs feat. Common

ラストはオーストラリア出身でUKで活動するジョーダン・ラカイ。新しい手触りのUKソウルなのにあのラッパーCommonも参加していて一気に親近感。Tom MischやLoyle Carner、Oscar Jeromeなどロンドンのジャズ〜ソウル界はどんどんん面白い才能が出てきていて追い切れないぐらい。こういうサウンドが気に入った人はジャズの名門レーベルBlue Noteが昨年、UKの新世代ジャズアーティストを集めて出したカヴァー・コンピ『Blue Note Re:imagined』をぜひチェックしてどんなユニークなアーティストが揃ってるかぜひチェックしてみてくださいね。この中にも収録されているDonald Byrdの名曲「Wind Parade」のカヴァーも素晴らしいので置いておきますね。

以上、最近の僕がハマっているUKサウンドのオススメを紹介してきました。定期的に更新しているSPotifyのプレイリスト「TJO Crates」でもUKサウンドはやっぱり多め。どんどん新曲紹介していくのでぜひフォローしてね。