TJO interviewed DJ KOMORI

TJO interviewed DJ KOMORI

 今回、私TJOがインタビューしたのは、レーベルメイトであり先日新曲を発表したDJ KOMORIさん。新曲 DJ KOMORI / TOKYO HOMESICK -I’m right here- (feat. aimi) についてのスペシャルインタビューをたっぷりお届けします。
 はじめに。今回KOMORIさんの新曲を聴かせてもらって感じたのは、コロナ禍を経て一本筋では表現しきれなくなった複雑な感情を、彼にとっての代名詞とも言える「R&B」「歌」で表現する際に、より内省的で新しいサウンドへ昇華しているのではないかという点。シンガーのaimiさん、アレンジャーのBen、MV監督のWADAKENさん、そしてチームの力添えもあり時代に呼応したR&Bの形へと進化した部分がとても印象に残りました。今作のコンセプトや制作陣や環境がどのように彼自身、そして作品に変化を与えたのか聞いてみました。

TJO – KOMORIさんが今回掲げた「TOKYO HOMESICK 」とは、どういったコンセプトで生まれたものですか?

DJ KOMORI – 「TOKYO HOMESICK」っていう言葉が思い浮かんだのは、元を辿ると自分が一眼レフカメラを買ったことがきっかけ。東京で生まれ育って当たり前に見ていたこの風景を、高性能のレンズを通して見るようになって。そしたら、街や人に対する解像度が明らかに上がったんだよね。「東京はこんなにキレイな街なのに、なぜこんなに寂しそうな人が多いのだろう」ー そう感じたイメージを言語化したのが「TOKYO HOMESICK」だったんだ。さらに今、コロナ禍で世界中の大都市の脆弱さが課題になっているでしょ。そういうことから、いま感じることを作品として残しておく必要があるんじゃないかと思い、動き始めたという経緯です。

TJO – なるほど。では、このコンセプトからリスナーに伝えたい真意とは?

DJ KOMORI – 自分がこの街で見ている景色は、ストレートに愛や平和を歌えるほど一面的ではないんです。例えば “コロナ” という共通の課題を前にしても、職業や年齢、環境によって不安に思うことがそれぞれ違うよね。それに、都市で暮らすことは好きなことに自由に打ち込める一方で、孤独になったり、ストレスを抱えやすいリスクのある環境だと思ってるよ。ただ、そんな複雑な状況でも「創造性」がすごくポジティブな可能性を持っていることに気づいたのは大きかったなぁ。現代は様々なデジタルツールや情報リソースが使えるでしょ、だから物事をクリエイティブに考えられれば、過去に無かった解決策も見つけられる可能性が大いにあると思うんだ。都市での制限された暮らしの中で、音楽や映像で何かを表現することだったり、デジタルを通じて誰かと接触したり、新しい知識を吸収することが、自分や他の誰かを救うことに繋がると思う。人類の歴史をみても、制限のある時代にこそ、新しいアートやクリエィティブが生まれるきっかけになってきたからね!あとは動物と一緒に生活できることも、多くの人にとって大切な意味を持つようになったと思うよ。そういったプロセスを「TOKYO HOMESICK」という作品を通じてシェアすることで、現代の生活にストレスを感じている世界の人達ともつながりを感じられるのでは、と考えているんだ。

TJO – そうですね。コロナ禍のいま、同じ大都会東京で生活するものとして共感することがたくさんある気がします。それもあってか、今回の作品を語る上で重要な役割を担っている映像も拝見しましたが、再生してすぐに現実と近未来がミックスされた画に深く惹き込まれ、KOMORIさんが前述されたコンセプトが凝縮された世界観に圧倒されました。愛猫の閣下もナイスアクターでしたね!これは普段Twitch配信で見るKOMORIさんのお部屋をSFチックな未来と織り交ぜた世界のようになっていましたが、この映像は VJ WADAKENさんが手掛けたMusicVideoということですよね。どのような経緯で生まれたものでしょうか?

DJ KOMORI – 今回のコンセプトやイメージをざっくりと伝えて、それをWADAKENさんが形にしてくれました。限られた条件の中ですごくクリエィティブなアイデアを出してくれて、ミニマルな設定の中にもストーリーを感じる映像に仕上げてくれたんだ。WADAKENさんはすごく感性が研ぎ澄まされた映像クリエイターだと思うので、今回のテーマに共感して製作してもらえたと思います。日本の映像作品で言うと、自分にとってはジブリ作品や人気のテレビドラマよりも、例えば「攻殻機動隊」の方が「エモい」って感じるんだよね。日本のTVドラマやバラエティーって、世界観が古くて自分にとってはもはやリアリティがほとんど無くて。それに比べて、都市で暮らしてデジタルデバイスで常時接続している今の自分達にとっては「攻殻機動隊」みたいな作品の方に共感やノスタルジーを感じるんですよ。数十年前にSFで描かれていた世界が、我々が自覚しているよりも現実になっていると思う。ディストピアに登場するキャラクターが時々見せる「虚無感」の様なものを、WADAKENさんが映像で上手く表現してくれたと思います。

TJO – 楽曲とヴィジュアル、両方から五感に訴えかけるようなこのクリエイティビティは是非みなさんにも体感していただきたいですね。ではコンセプト、ヴィジュアルについてお聞きしたところで、次はボーカルについてお聞きします。今回、気鋭のシンガーaimiさんを起用した経緯についてお聞かせ下さい。また、彼女はこの作品で「KOMORIさんの今を私なりの視点で作品に落とし込んだ」とSNSで語っていましたが、どう言ったやりとりで歌詞は生まれたのでしょうか?

DJ KOMORI – 自分の作品はいつも、SUGARBITZのクリエィティブチームと話し合って製作を進めています。今回のaimiさんの起用はSUGARBITZの竹本社長からの提案だったんだけど、自分としては彼女の楽曲を聴いてもう即決!!という感じだった。今の時代の感覚とノスタルジックなR&Bの感覚をあわせ持つ、とても貴重なタレントだなと思ったんだ。
製作ではaimiさんが、自分のぼんやりとした想いをすごく親身に受け取ってくれたんだ。彼女と話した時に、お互いコロナ禍の自粛期間を前向きに考えられたって話をして、それが楽曲にも反映されているなと思う。繊細な詩的表現とメロディー、さらにR&Bの複雑なコーラスワークを作り上げる必要があるので、とても難しい仕事をお願いしたわけなんだけど。結果としてすごくいい作品に仕上がって、aimiさんにお願いして本当に良かったと思ってるよ。

TJO – もうひとつ、楽曲アレンジに思わず目がとまりました。Juice WRLDの楽曲も手がけたLAのBen Lidskyが参加していますよね。彼とのやり取りからどういったサウンドの変化が生まれましたか!?

DJ KOMORI – USのHipHopシーンで活躍するクリエイターでありながら、すごく丁寧な仕事をするという印象だったな。最初は少し大人しい仕上がりだったので、「変にこちらに合わせようとせず、好きなようにやっていいよ!」というメッセージを送りましたね。ドロップのアレンジはかなり難しかったと思うのですが、いい意味で自分に全く無い発想をプラスしてもらえたかな。あとはヴォーカルの空間処理などは、ビジュアルのイメージを詳しく伝えて調整してもらった結果、すごく良い仕上がりになったと思う。彼は今も色んな世界的アーティストと新曲をやっているようなので、売れっ子になりすぎる前にまた一緒に仕事をしたいです。笑

TJO – この作品1楽曲の中に込められた背景を色々と聞けてとても面白かったです。ところで、「TOKYO HOMESICK 」はこれからも続いていくプロジェクトなのでしょうか?今後どういった仕掛けや世界観が展開されていくか、今話せる段階でいいのでぜひ教えてください。

DJ KOMORI – 今回の作品は、自分にとって5年ぶりのオリジナルの新曲です。どうしてそこまで間が空いたかというと、作りたい「ストーリー」が自分の中で浮かばなかったからなんだよね。今の時代はテクノロジーのおかげで、ヒット曲をコピーすることがすごく簡単になったでしょ。SPLICE(音楽制作者向けのサブスク)やSerum(ソフトシンセの一種)を使えば、チャートの曲とほぼ同じサウンドのトラックが誰にでも作れる世の中になりました。そうなると当然、流行りのサウンドをコピーすることの価値はどんどん陳腐化して薄れていくんだよね。だからこそ、人間にしか出来ないクリエイティブな仕事をしないと音楽を作る意味が薄れてしまうと思う。自分が感じた直感からストーリーやイメージを膨らませて、アートとして音楽を作るプロセスが今こそ重要だと思うんだ。「TOKYO HOMESICK」の続きはまだ決定してはいないけど、自分の感性とストーリーを大事にする創作を続けたいなと考えています。

 以上、TJO × DJ KOMORIスペシャルインタビューをお届けしました。もう聞いた方もまだ聞いていない方も、このインタビューを読んだあとに改めて「TOKYO HOMESICK」をお楽しみ下さい!TJOでした!

DJ KOMORI / TOKYO HOMESICK -I’m right here- [feat. aimi]
Release Date:2021.04.28 (Wed.)
Label:SUGARBITZ Co.,Ltd.
各種配信サービス >> https://lnk.to/DJKOMORI_TH01
YouTube >> https://youtu.be/yovqIaHtiDo