[TJOコラム] House Music Alias/現行ハウスDJ達の別名義

[TJOコラム] House Music Alias/現行ハウスDJ達の別名義

知ってた?今をときめくハウス・プロデューサー達の別名義

今年の頭にBBC Radio1のPete Tongの番組で期待の新人としてSIDEPIECEというハウス系ユニットが紹介されていた。SIDEPIECEといえばDiploが立ち上げたハウス専門のレーベル「Higher Ground」からDiploとの共作で”On My Mind”を2019年にリリースし、これが今年のグラミー賞の最優秀ダンス・レコーディング賞にノミネートされて話題になったばかり。そんな彼らだが実はそれぞれがベース・ミュージックシーンで大活躍するParty FavorとNitti Grittiによるコンビ。これ自体は知られた情報ではあるもののここ数年のハウス・シーンで活躍するアーティストにはこう言った違うジャンルや作風から方向転換してくる人が多い。

中にはSkreamやDJ ZIncのように名前変えずにダブステップからテクノにジャンルをシフトチェンジするDJもいるが、Calvin HarrisがLove Regenerator、David GuettaがJack Back、Martin GarrixがArea21、Ytram、AfrojackがKapuchonとEDM界の大物DJ達がハウスやテクノ系の別名義で新しい可能性を模索するなど、こういった変名を用いる動きは今また盛んになっている気がする。


というわけで今回は主にちょっと調べないと分からないような、ベースミュージック(ドラムンベース、ダブステップ、トラップ)や2010年前後に流行したエレクトロやフィジェットハウスから現行のハウスへシフトしたアーティストを14組紹介していきたい。自分で調べてても「え?!この人だったの!!」とビックリしたのも何個かあるので。

例のごとく僕のSpoyifyプレイリスト「TJO Crates」に14組、
今のハウス名義+元の名義の曲=合計30曲追加したので音の変化を一気に楽しんでみて。

1. SIDEPIECE = Party Favor + Nitti Gritti

さっき紹介したばかりの二人。Pary FavorはDiploのレーベル「Mad Decent」などで数々のフロアバンガーを生み出し、Nitti Grittiはここ数年で一気に頭角を表しハードなフェスティバル・トラップからメロウなフューチャーベースまで手掛ける実に器用なプロデューサー。Nittiに関してはDiploとBad Bunnyの”200Mph”をプロデュースしラテングラミー賞も受賞。そんな先輩Diploと組んだグラミーノミネート曲の”On My Mind”は90年代のアメリカのR&Bグループ702の”Steelo”という曲をサンプリングってのも「らしい」感じで良い。ちなみにNitti Grittiの”Anothe Way”という曲は去年のベストソングにも入れるくらい大好き!

2. Body Ocean = Noisia + The Upbeats

これはこの記事をアップする直前に知った新曲&新ユニット。それぞれドラムンベースシーンでも大人気のNOISIAのNik RoosとThe UpbeatsのJeremy Glennによるユニット。NOISIAは2020年に解散を発表して、3人のメンバーが今後それぞれソロで活躍するといった矢先でThe Upbeatsとさっそくハウス・シーンに参入。リリース元のSTMPD RecordsはMartin Garrixの主宰レーベル。このレーベルも毎回いい作品出すのでオススメ。

3. Eli Brown = Loadstar (Xample)

いわゆるここ数年のハウス〜テックハウス・ムーヴメントの中で間違いなく中心人物の一人に入るEli Brown(イーライ・ブラウン)は、元ドラムンベース・アーティスト。本名Gavin Harrisといって2003年からXample名義でキャリアをスタート、2007年に”Lowdown”という曲でUKダンスチャート1位を獲得。その後ドラムンDJのLomaxと組んでLoadstarというユニットで2010年代にAndy CのレーベルRam Recordsからメジャーシーンで大活躍。Eli BrownはSkreamのレーベルOf Unsound Mindから出した初期の”Tech This Out”がマジで最高。

4. Solardo = MRK1 (Virus Syndicate)

彼らも現行ハウス・シーンの超重要ユニット。Mark FosterとJames Barlowの二人組で、Mark Fosterが元々ソロでMRK1(Mark One)名義、そしてマンチェスターのグライム系の人気ユニットVirus Syndicateのメンバーとしてダブステップやグライムシーンでゴリゴリのベースを鳴らしていた人。

5. Camelphat = Re-Con

現行ハウス・ムーヴメントの起爆剤の一つである名曲”Cola”を世に放った彼らもメンバーのMike Di ScalaはRe-Conなど様々な名義でハードスタイル・シーンを中心に活躍していた人。ちなみに2012年のNe-Yoのヒットソング”Let Me Love You”のソングライティングにも彼は参加してるんだって!

6. Redlight = Clipz

UKから低音重めのベーシーなハウスをいち早く送り続けてきたRedlightは元々ドラムンベース界のベテランClipzの変名。重鎮Roni Size率いるFull Cycle Recordsのクルーとして活躍し、しばらくドラムンはお休みしてたけど、2年前ぐらいから再びClipz名義で復活。”Again”は2020年を代表するドラムンベースヒットになったのも記憶に新しい。

7. Dr. Packer = Greg Packer

今度はハウス系でなくディスコから。アーティストならPurple Disco Machine、レーベルならJoey Negro率いる”Z Records”やUK名門ハウスレーベルのDefectedが”Glitterbox”なる専門レーベルを作り、BEATPORTにもわざわざジャンルとして「NU DISCO / DISCO」コーナーが生まれるほど新たなブームが来てるディスコ。そのシーンでRe-Editもので人気を集めるDr. Packerも元はドラムンベースDJ。日本を代表するドラムンベース・プロデューサーMakotoさんとも縁が深く、Greg Packerという名前で気持ちいいメロウな作品をリリースしてました。

8. Dance System = L-Vis 1990

今のハウス・ムーヴメントの中で2020年のMVPといえば彼。あのCalvin HarrisもLove Regenratorプロジェクトを始めるキッカケの一人になったと公言しているぐらい。本名James ConnollyはL-Vis 1990名義で2010年前後からBok Bokと共に”Night Sugs”といレーベルを運営し、新しいベースミュージックの可能性を追求してたプロデューサー。最初の頃は”L-Vis 1990 presents Dance System”として初期衝動的な荒削りなテクノなどをリリースしていたが、2019年にDance System名義に集中。ビジュアルも含めて完全に90’sレイヴな世界観が最高。

9. Paul Woolford = Special Request

これはベースミュージック→ハウスの流れではなくてその逆なんだけど、彼もここ数年での活躍の勢いと評価が高いので紹介。2000年ごろからカッティングエッジなテクノ〜ハウス作品で、どちらかというと尖ったアーティストとしてアンダーグラウンドから絶大な支持を得ていたが、ここ数年は90’sのハウスを象徴するKORG M1のピアノサウンドを武器にキャッチーでメロディアスな四つ打ちを量産している。そんな彼がよりアンダーグラウンドなブレイクビーツや実験的なサウンドを行うために使っているのがSpecial Request名義。これもCalvin Harrisが影響を受けたと公言する一人。ちなみに下の曲で共作しているSecondcityは、今もベースハウスシーンで活躍するTaiki Nulightの元メンバー(Nulightの方)。

10. Gorgon City = Foamo + RackNRuin

ここからは2010年前後のエレクトロ〜フィジェットハウスシーンで活躍してたアーティスト関連で。今回の記事を書く際に調べてたらまさかの彼らも変名!個人的にはSolardo、Camelphatと彼らで「テックハウス御三家」と呼んでいるほど人気ユニットGorgon CItyが何とフィジェットハウスのFoamoとダブステップのRackNRuinのコンビだったのは意外過ぎて。

11. Low Steppa = Will Bailey

こちらも同じくらいびっくりした案件。音圧はしっかり今なのに、クラシックさも感じさせる跳ねたグルーヴがカッコいい四つ打ちを送り届けてくれるLow Steppa、実は元エレクト・ハウスのWIll Bailey。彼の主宰するレーベル「Simma Black」はハウス好きからも大人気だけど、そういえばWIll時代にやってたレーベル名もそのまま「Simma Records」って名前だったな。

12. Friend Within = Lee Mortimer

ここら辺の流れは最近調べて全部ビックリした変名。Fatboy Slimのリミックスなどを筆頭に聞いたことあるクラシックWildchild – Renegade Masterネタのベースハウスで2013年い大ヒットを放ったFriend Within。その後もDisclosureと共作したり、最近ではMark Knight率いるハウス名門レーベル”Toolroom”からリリースを重ねているが、彼も2010年代のフィジェットハウス・シーンで大活躍したLee Mortimerだった!

13. Shadow Child = Dave Spoon

UKハウス・シーンでベースハウスからテクノまで自在に行き来するShadow Childも、元々Dave Spoonとして2005年に”Toolroom”からデビュー。よりメジャーなハウスシーンでMadonnaやBeyonceのリミックスも手掛けるほどに大活躍。

14. Austin Ato = Drums Of Death

最後に紹介するのは、Defected傘下のClassic Music CompanyからもリリースするAustin Ato。より生音寄りで気持ち良いグルーヴィーなハウスを作る彼は、Drums of Death名義でHot ChipのJoe Goddardが主宰する”Greco-Roman”やUKのエクスペリメンタルな攻めたリリースで知られたCivil Musicからダークなエレクトロ〜テクノ作品を出してエレクトロ・シーンで知られた存在。

以上、「人に歴史あり」だし、こうやってアーティストの名義から今と過去の音の違い楽しんだり、ダンスミュージックの系譜見れるのもとっても楽しいね。僕も知らなかった衝撃な変名もあったし。この中であなたがビックリしたアーティストはいましたか?